オンプレミス型CRMとは？クラウド型CRMと違い、導入メリット・デメリットまで解説

オンプレミス型CRMとは

オンプレミス型CRMとは、企業が自社のサーバーやデータセンター内にCRMシステムを構築し、運用する形態を指します。オンプレミスは自社の敷地内という意味で、システムのハードウェアからソフトウェアまですべてを自社で保有し管理する方式です。

クラウド型とは異なり、インターネットを経由せず社内ネットワーク内で完結するため、高いセキュリティ性とカスタマイズ性を実現できる点が大きな特徴です。ソフトウェアは買い切り型のライセンス購入が一般的で、自社のIT資産として長期的に活用できます。

外部ネットワークとの接続が制限される環境でも安定稼働するため、重要インフラ系や工場内の生産管理ネットワークなどでも採用されています。またアップデートのタイミングやデータ保存先、アクセス権限の管理なども自社主導で決定できるため、企業の情報セキュリティポリシーに完全準拠した運用が可能です。

オンプレミス型CRMは、以下の要素で構成されます。

これらすべてを企業が自ら準備し、継続的に維持管理していく必要があります。ハードウェアの選定から設置場所の確保、運用体制の構築まで、導入には綿密な計画が求められます。

オンプレミス型CRMとクラウド型CRMの違い

オンプレミス型とクラウド型では、システムの設置場所だけでなく、導入プロセスや運用方法が大きく異なります。デロイトトーマツミック経済研究所の調査資料によると、日本国内のCRM市場ではクラウド型が急速に成長しており、2023年度に約5,000億円だった市場規模が2029年度には12,000億円を超える見込みです。一方でオンプレミス型市場は2023年度の約3,700億円から2029年度には2,500億円程度まで縮小する予測となっています。

この市場動向は、多くの企業がクラウド型の利便性を評価している一方で、セキュリティや既存システム連携の観点からオンプレミス型を必要とする企業も一定数存在することを示しています。

以下の表でオンプレミス型とクラウド型の主な違いを整理します。

オンプレミス型では企業が自らセキュリティポリシーを策定し、ファイアウォールの設定やアクセス権限の管理、バックアップの実施などすべてのセキュリティ対策を管理します。業界特有の規制や社内ルールに完全準拠した運用が可能で、データの物理的な保管場所も自社で決定できます。

クラウド型ではベンダーが提供するセキュリティ基準に依存します。多くのクラウドベンダーは国際的なセキュリティ認証を取得し高度なセキュリティ対策を実施していますが、データの保管場所や管理方法についてはベンダーの方針に従う必要があります。データセンターの所在地が海外の場合、データ主権に関する懸念が生じることもあります。

金融機関や医療機関などコンプライアンス要件が厳しい業界では、データの所在や管理方法を明確にできるオンプレミス型が選択される傾向があります。

オンプレミス型CRMを選ぶメリットとデメリット

オンプレミス型CRMの導入を検討するにあたり、メリットとデメリットの両方を理解しておくことは不可欠です。以下では具体的なメリットとデメリットを詳しく解説します。

オンプレミス型CRMのメリット

オンプレミス型CRMには、以下の4つの導入メリットがあります。

① 高度なカスタマイズが可能

オンプレミス型CRMの最大の強みは、APIの制限や標準仕様に縛られることなく、自社の業務プロセスに完全に適合した設計ができる点です。画面レイアウトの変更、独自の入力項目追加、帳票出力のカスタマイズ、既存の業務システムとの連携など、あらゆる要件に柔軟に対応できます。

② セキュリティを完全に管理できる

オンプレミス型では社内ネットワーク内でシステムが完結するため、外部接続を一切行わない設計が可能です。これにより情報漏洩リスクを最小限に抑えられます。ファイアウォールの設定、アクセス権限の管理、データの暗号化方式、監査ログの取得と保管など、すべてのセキュリティ対策を自社のポリシーに基づいて実施できます。特定のIPアドレスからのみアクセスを許可したり、物理的なサーバーへのアクセスを厳格に制限したりすることも可能です。

 ③ 法的・業界的要件対応

金融庁のガイドライン、医療法に基づく情報管理要件、地方自治体の情報セキュリティポリシーなど、業界特有の法的要件にも柔軟に対応できます。監査対応のための詳細なログ取得、証跡管理の仕組み、データ保存期間の設定など、すべて自社の基準で構築できるため、外部監査や内部統制の要件を満たしやすくなります。特に金融業界のFISC基準や医療業界の三省ガイドラインなど、厳格な業界基準が存在する分野では大きなメリットとなります。

 ④ インターネット環境に依存しない

オンプレミス型CRMは社内ネットワーク経由でアクセスするため、インターネット回線の障害や通信速度の影響を受けません。オフライン環境下でも安定して動作し、ネットワーク障害による業務停止のリスクを回避できます。工場や倉庫など外部ネットワークとの接続が制限される環境や、災害時でも社内システムが稼働していれば業務を継続できる点は大きな強みです。

オンプレミス型CRMのデメリット

一方で、オンプレミス型にはいくつかの課題も存在します。導入前に下記のような点を検討しておきましょう。

① 初期費用・サーバー構築費が高額

オンプレミス型CRMの導入には、サーバー機器やネットワーク機器の購入、ソフトウェアライセンスの取得、システム構築費用など、数百万円から数千万円規模の初期投資が必要です。中小企業にとってこの初期投資が大きな障壁となるケースが少なくありません。特に導入効果が不透明な段階でこれだけの投資判断を行うことは、経営上のリスクとなり得ます。

② 導入までの期間が長い

オンプレミス型CRMの導入には要件定義から稼働開始まで通常6ヶ月から1年程度かかります。ハードウェアの調達や設置、システムの構築、カスタマイズ、テスト、データ移行、ユーザートレーニングなど多くの工程を経る必要があるためです。クラウド型CRMであれば契約後数日から数週間で利用開始できる場合もあり、導入スピードには大きな差があります。市場環境の変化が速い業界や、早期に営業活動の効率化を実現したい企業にとって、この時間的コストは無視できません。

③ 保守・運用の負担が大きい

オンプレミス型ではシステムの保守と運用をすべて自社で行う必要があります。サーバーの24時間365日監視と障害対応、OSやミドルウェアのアップデート、セキュリティパッチの適用、定期的なバックアップの実施と検証、ハードウェアの保守メンテナンス、災害対策の準備など、多岐にわたる業務が発生します。これらを適切に実施するには専門知識を持つシステム管理者が必要となり、人件費を含めた運用コストが継続的に発生します。

④ 最新機能の導入が遅れる

クラウド型CRMではベンダーが定期的に新機能を追加し、すべてのユーザーが自動的にアップデートの恩恵を受けられます。しかしオンプレミス型では新機能を利用するために大規模なバージョンアップ作業が必要となり、最新技術の活用が遅れがちです。特にAI機能を活用した営業支援、モバイル対応の強化、リアルタイム分析機能など、近年のトレンド機能を活用したい場合、クラウド型の方が有利なケースが多く見られます。技術進化のスピードが速い現在、この差は競争力に直結する可能性があります。

オンプレミス型CRMツールを選ぶときのポイント

オンプレミス型CRMの導入を成功させるためには、以下のポイントを押さえた製品選定が重要です。

ポイント1：自社の業務要件との適合性を確認する

まず自社の営業プロセスや顧客管理の方法を詳細に分析し、CRMに求める機能要件を明確にすることが最初のステップです。標準機能だけで対応できるのか、カスタマイズが必要なのか、既存システムとの連携は可能かなどを事前に整理しておきましょう。

主要なベンダーに対しては実際の業務フローを説明し、デモンストレーションやPOC（概念実証）を実施して製品の適合性を見極めることが重要です。特に業界特有の商習慣や社内独自のルールがある場合は、それらに対応できるかを必ず確認してください。

ポイント2：カスタマイズ性と拡張性を評価する

オンプレミス型を選択する主な理由の一つがカスタマイズ性の高さです。以下の観点から製品を評価しましょう。標準機能で実現できる範囲を確認した上で、画面レイアウトや入力項目、ワークフローなどのカスタマイズがどこまで自由に行えるかを検証します。API連携の可否と仕様の公開状況、将来的な機能拡張への対応力も重要な判断材料です。

また開発に使用されている言語や技術スタックが自社のIT部門で保守可能なものかどうかも確認しておく必要があります。特殊な技術が使われている場合、将来的にベンダーへの依存度が高まり、保守コストが増大するリスクがあります。

ポイント3：サポート体制とベンダーの信頼性を確認する

長期的に利用するシステムだからこそ、ベンダーのサポート体制と事業継続性は慎重に評価すべき項目です。導入時のサポート内容として、要件定義や構築支援、ユーザートレーニングなどがどこまで含まれるかを確認します。稼働後のサポート体制については、問い合わせ窓口の対応時間、SLAの内容、障害時の対応フローなどを詳しく把握しておきましょう。

バージョンアップやセキュリティパッチの提供頻度も重要です。特にセキュリティパッチが迅速に提供されるかどうかは、システムの安全性を保つ上で不可欠な要素です。業界特有の要件がある場合は、同業種での導入実績が豊富なベンダーを選ぶことで、業界特有の課題への対応がスムーズになります。

よくある質問

以下には、オンプレミス型CRMの導入に関して、よくある疑問をまとめてご紹介します。

Q1: オンプレミス型CRMとは？

オンプレミス型CRMとは、企業が自社のサーバーやデータセンター内にCRMシステムを構築し、自ら管理・運用する形態のことです。ハードウェアからソフトウェアまですべてを自社で保有し、社内ネットワーク経由でアクセスします。クラウド型と異なりインターネットを経由しないため高いセキュリティ性とカスタマイズ性を実現でき、金融機関や医療機関など厳格なセキュリティ基準が求められる業界で多く採用されています。

Q2: オンプレミス型CRMとクラウド型CRMの違いとは？

主な違いはシステムの設置場所と管理方法です。オンプレミス型は自社サーバーに設置し自社で管理するのに対し、クラウド型はベンダーのサーバーで運用されインターネット経由で利用します。オンプレミス型は初期費用が高額で導入に数ヶ月かかりますが高度なカスタマイズが可能で、クラウド型は初期費用が低く短期間で導入できますがカスタマイズに制限があります。セキュリティ面ではオンプレミス型が自社で完全管理できるため、金融機関や医療機関など厳格な要件がある業界で選ばれています。

Q3: オンプレミス型CRMのメリットとは？

オンプレミス型CRMの主なメリットは4つあります。1つ目は自社の業務プロセスに完全適合した高度なカスタマイズが可能な点、2つ目はセキュリティを完全に自社管理でき情報漏洩リスクを最小化できる点、3つ目は金融業界のFISC基準や医療業界の三省ガイドラインなど厳格な法的要件に対応できる点、4つ目はインターネット環境に依存せず安定稼働しネットワーク障害のリスクを回避できる点です。

Q4: オンプレミス型CRMのデメリットとは？

主なデメリットは4つあります。1つ目は初期投資が数百万円から数千万円と高額で中小企業には大きな障壁となる点、2つ目は導入に6ヶ月から1年かかるのに対しクラウド型は数日から数週間で開始できる点、3つ目はサーバー監視や障害対応など保守運用をすべて自社で行う必要があり専門人材の確保と運用コストが継続的に発生する点、4つ目は新機能の利用に大規模なバージョンアップが必要で最新技術の活用が遅れがちな点です。これらの負担を考慮した上で導入を検討する必要があります。

Q5: 自社に最適なオンプレミス型CRMはどう導入すれば良いですか？

オンプレミス型CRMの導入を成功させるには、まず自社の営業プロセスと顧客管理方法を分析し、必要な機能要件を明確にすることが重要です。標準機能で対応できるか、カスタマイズや既存システム連携が必要かを整理し、主要ベンダーにデモやPOCを依頼して適合性を確認しましょう。カスタマイズ性や拡張性、API連携の可否、自社IT部門で保守可能な技術かを評価し、ベンダーのサポート体制や同業種での実績も慎重に確認することが成功の鍵です。

オンプレミス型CRMの導入でお悩みの方は、ベトナムオフショア開発で20年以上の実績を持つルビナソフトウエアにお任せください。要件定義から導入後のサポートまで一貫して対応し、セキュリティ要件の厳しいシステム開発も安心してお任せいただけます。

まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

6. まとめ

オンプレミス型CRMは高度なカスタマイズ性、完全なセキュリティ管理、既存システムとの密接な連携という点で、特定の企業や業界にとって最適な選択肢となります。一方で高額な初期投資、長い導入期間、継続的な保守運用の負担といったデメリットも存在します。

近年ではクラウド型CRMの機能向上やセキュリティ強化が進んでおり、多くの企業がクラウド型を選択する傾向にあります。しかし金融機関や医療機関、製造業の一部など、オンプレミス型が依然として有効な業界や用途も存在します。

CRM導入は営業活動の効率化と顧客満足度向上という重要な目的を持つ戦略的な投資です。十分な検討と準備を行い、自社のビジネスに最大の価値をもたらすシステムを選定してください。

ルビナソフトウエアは、ベトナムオフショア開発で21年以上の実績を持ち、特定のビジネス要件を満たすCRMソリューションを提供しています。金融、医療、製造業など幅広い業界でのシステム開発経験と高度なカスタマイズ対応力により、貴社の業務プロセスに最適化されたオンプレミス型CRMシステムを構築いたします。

オンプレミス型CRMの導入をご検討の方は、まずはお気軽にご相談ください。

貴社のビジネス課題に最適なCRMソリューションをご提案いたします。